【速報Hanada, 2019.1号】徴用工問題に対する日本擁護論(櫻井よしこ×西岡力)

慰安婦の次は徴用工

曲がりなりにも慰安婦問題については最終的・不可逆的に「日韓合意」が交わされてしまったこともあり、日韓歴史戦の焦点は徴用工問題に推移しつつあるように思えます。

徴用工問題にはさほど詳しくないのですが、保守論壇の日本擁護論の基調は、どうも慰安婦問題に対するものと同一のように思えます。つまり徴用工員は、①強制ではなく募集に応募した者であり、②好待遇の職場であり奴隷にのようなものではなく、③既に補償問題は解決済み、という三点が重要に思えます。

保守論壇が朝鮮人慰安婦を「売春婦」呼ばわりして罵倒しても、(韓国は勿論のこと)国際的理解が全く得られないことは明白です。このような言説は国民感情を煽るだけの国内消費向けであり、全く両国問題の解決に結びつきません。徴用工問題についても同じことが言えるのではないでしょうか。

そんなわけで今回紹介したいのは、櫻井よしこ氏と西岡力氏との対談「“徴用工”を焚き付けた反日日本人」(『Hanada』2019.1号)に説かれる、理論の骨子です。

原告は徴用のはじまる1944年9月以前に募集に応じてきた

2018年10月30日に韓国大法院(最高裁)が、新日鉄住金に元徴用工四名に対し四億ウォンの損害賠償支払いを命じる判決を下しました。この対談はそれを受けてのものです。まず原告両者が「徴用」でない点が問題視されます。

櫻井 つまり、原告四人はいずれも徴用の始まる四四年九月以前に、募集に応じて日本に働きに来た労働者だったわけですね。

この理論で日本を弁護することはあまり得策ではありません。これを裏返せば四四年九月以降に「徴用」された者に対しては支払いの義務があると認めなくてはならなくなります。「徴用」という語は、語義的に「強制性」が含意されます。

好待遇だった

また慰安婦が高給取りだった例をあげながら、徴用工員も好待遇で高収入だった点を力説します。

櫻井 企業側の募集に対して官が斡旋する際、該当する職場に行くか行かないかを労働者の自由意思によって決めることができました。納得いかなければ断る自由が彼らにはあった。

西岡 徴用工の待遇も決して悪くありませんでした。……広島の工場で月給百四十円を支給され、新しい寄宿舎にふかふかの布団があり、アワビや柿やみかんを食べながら毎晩酒盛りができた、と記されています。

こういう議論は本当によくないと思います。このような一部の証言だけを取り上げて、さも徴用工員全体が好待遇だったかのように決めつける言説は正しくありません。徴用工員の悲惨な一例は「花岡事件」を調べればよく解りますし、中国人徴用工四万人のうち七千人が亡くなった事実からも明らかでしょう。(野添憲治『企業の戦争責任』社会評論社, 2009を参照)

個人請求権の消滅

このように「強制徴用でなかった」「好待遇だった」の二点は徴用工問題を解決するには明らかに弱い論点であり、国民感情を煽るだけの国内消費向けのものに過ぎません。

一方で、最後の一つ「1965年の日韓請求権協定で、一喝して個人請求問題は解決済み」という理解は、唯一国際的に通用する理論ではないでしょうか。

櫻井 国民即ち個人も、また法人も含めて全ての財産・請求権問題について「完全かつ最終的に解決された」と確認したわけですね。

しかし保守論壇の悪い癖で、余計な一言が多い。

西岡 …日本の資金をまとめて受け取り、…ダムや製鉄所、道路を造り、経済成長に繋げ、韓国国民全員を豊かにしたのです。
櫻井 その結果、「漢江の軌跡」と呼ばれる経済成長を成し遂げたことは周知のとおりです。

日本が払った賠償金のお蔭で韓国の繁栄があるということでしょう。全く余計な一言です。韓国が豊かになったからといって、徴用工員個人の被害者感情が癒せるものではありません。

これとよく似た理論は、日韓併合に関する保守論壇の「日本の投資おかげで韓国は近代化できた」にも確認されます。そしてこのような言説が、韓国の被害者感情を癒すどこか、反日感情を焚き付けてることも言を俟ちません。よって真の国家間解決を目指すなら、このような言説は全く不要です。

国家間解決ではなく、国内消費向けの“徴用工”議論

この後、櫻井よしこ氏と西岡力氏は、徴用工問題を取り組む日本人関係者を「反日」と位置付けたり、韓国はあらゆる分野で異常な事態が起こっているだのと決めつけたり、“徴用工”問題を通して日本人の反韓感情を焚き付けてます。

このように両者の対論は、現実的な徴用工問題の解決を目指したものではなく、韓国に対する不平不満を煽る国内消費向けの議論に過ぎません。つまり、反韓感情を持った日本人に読んでもらうための文章だということです。

何事も被害者感情というものは、一度謝罪・賠償が済めば消えるというものではありません。仮に司法的に償いを果たしたとしても、その後に加害者が傲慢な態度を取っていたならば、元被害者の感情は穏やかではいられないでしょうし、その逆の状況もまた然りです。

せっかく1965年に解決していたはずの徴用工問題が、ここに来て蒸し返される要因の一つには、無意味に国民感情を煽る両国論壇の言説があるように思えます。

4 件のコメント

  • >原告は徴用のはじまる1944年9月以前に防臭に応じてきた

    「募集に応じてきた」ですね。
    どこの小林製薬だw

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