【虎ノ門ニュース】『日本国紀』監修者・上島嘉郎氏の「責任回避」の理論【保守側からの批判を恐れる『日本国紀』関係者】

百田尚樹×上島嘉郎「虎ノ門ニュース」2018.11.20(火)

11月20日にYoutube上で放映された「虎ノ門ニュース」には、『日本国紀』の著者である百田尚樹と、その監修者の上島嘉郎氏の両名が登場しました。

すでに本書をめぐっては、その内容の錯誤性のみならず、Wikipedia無断転載問題や、中国を絶賛し皇統断絶を主張する反日的言説まで話題になっていましたから、このお二人がこれらにどの様に答えるのか興味津々で拝見しました。

すでに本ブログでは、この放送で百田氏がWikipediaコピペ問題を大筋で認めてしまった爆弾発言について記事にしています(リンク)。続いて本記事では、ゲスト参加された上島嘉郎氏の言説を取り上げていきたいと思います。

責任回避の言説

この「虎ノ門ニュース」を見た時の最初の印象は、微妙に緊張した空気が流れており、どことなく百田氏も上島氏も不自然な感がありました。上島氏は本書の内容について聞かれても、非常にあいまいな言説しかしません。例えば次のようなもの。

良いことも悪いこともまるっと含めて、愛情をもってね、この本をこう抱きしめたい

10:25

上島氏はこの他にも「出したことに意義がある」論を展開して『日本国紀』を擁護しますが、本書の内容の是非については口を噤むという態度を貫きました。また上島氏は、監修として本書の内容にも一定の責任を担っている筈ですが、これについても責任回避していると読み取れる言説が。

百田さんは、数多の資料を集めて、そこで百田尚樹の責任の下にこれを書き上げたというところでね、了解してほしいというところで出来てる本ですよこれ

1:29:30

あくまでも本書は、百田尚樹の責任下で著された「百田史観」であるというのでしょう。

保守側からの反論にむしろ敏感

このように監修した上島氏ですら、本書の内容に関する言説を避けていることは特筆に値します。さらに興味深いのは、上島氏が、非保守・反保守的アンチからの反論よりも、むしろ保守側の反論に極めて敏感なところです。

次のように言います。

百田は反日だって言う人もいるかもしれない。だけどね、…ネットの反応を少し見たけども、たとえば百田さんがこれは私の推測だけどとか、想像だけどと断っているところに関して「けしからん」と言ってもしょうがないんです。

10:42

つまり『日本国紀』では、記紀神話を貶めたり、皇統断絶を主張したり、中国を絶賛したりと、およそ保守本には相応しくない反日的記述が保守から批判されている点がここで取り上げられています。そのような批判に対し上島氏は、百田氏の推測・想像であるからそれに対して文句を言ってもしょうがないと弁護しています。

興味深いことに、これと同趣旨を編集の有本氏も呟いています。このような共通する反応から、『日本国紀』関係者は、アンチからの反応のみならず、保守側からの厳しい反応にも気をとがらせていることが解ります。

確かに言論の自由が保障されていますから、どのような主張をしてもかまいません。しかし本書が記紀神話批判や皇統断絶説を展開していることは、保守論客が突然に朝日新聞社を擁護しだすくらいインパクトを持つ出来事であることを考慮するべきでしょう。

【考察】恐らく彼らは何も知らなかった——なぜ『日本国紀』第一章が記紀神話から始まらないのか?

2018.11.18

魏志倭人伝弁護

またもう一つ興味深いコメントがありました。上島氏は、放送の後半で突然話をさえぎって、『日本国紀』が魏志倭人伝(中国正史)を引用していることを擁護はじめます。

ちょっと付言すると、魏志倭人伝という中国の歴史書を取り上げているから百田はダメだっていう人もいるけど(百田:そういう声もあるんですよね)、だけど……百田さんが注目しているのは、そういうなかでも、たとえば「日本人は盗みをしない」とか……だから彼ら(中国)の言いなりの、なんか話を百田の、こう持って来てるみたいに言うのも、これまた「読まずに」ていう風にしか見えないですよね。

1:30:30

要約すれば上島氏は「日本人を褒める箇所を引用しているから問題なし」論を展開しています。しかしこれの主張は、必ずしも『日本国紀』の持つ反日性・反保守性を弁護しきれていません。というのも、魏志倭人伝ではなく記紀に基づいて日本の歴史を再構成することが、これまでの保守歴史戦の悲願でした。にもかかわらず『日本国紀』は戦後GHQ史観的立場を取り、縄文・弥生から歴史を構成し、記紀(日本正史)よりも魏志倭人伝(中国正史)を重んじているところが反日的・反保守的なのです。よって「「読まずに」ていう風にしか見えない」という反論封じの言説は、まさに上島氏にこそ当てはまるでしょう。

まとめ

以上、「虎ノ門ニュース」に出演した上島氏の言説を分析しました。上島氏の言説は、以下のようにまとめられるでしょう。

  1. 『日本国紀』の内容の是非については無言。出版されたことの意義を主張し、あくまで『日本国紀』は百田尚樹氏の責任下で著された「百田史観」であることを強調(責任回避の理論)。
  2. アンチからの批判よりも、むしろ保守側からの批判に敏感になっている。

特に②の点については有本氏も同様の発言をしており、『日本国紀』の置かれた複雑な立場を象徴しているように思えます。

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2018.11.17

2 件のコメント

  • 百田氏は胡散臭いビジネス保守と思って軽蔑していました。思想は違えど、歴史家の方々が論破してくださり感謝しております。有本さんも変節家で嫌みのあるビジネス保守と思っています。

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