【陰謀論】「ベ平連」をソ連の活動団体と断定【日本国紀】

百田尚樹『日本国紀』のうちに、悪質な決めつけと捉えかねられない記述のあることが発覚しました。桜ういろう氏は次のように指摘ています。

つまり『日本国紀』は「ベ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)という市民連合について下記の断定を行っています。

  1. 「ベ平連」は「平和運動」という隠れ蓑を着たソ連の活動団体だった。
  2. ソ連のKGBから資金提供があった。
  3. アメリカ軍の「良心的兵役拒否」の脱走兵をソ連に亡命させる活動も行ってきた。

以上の「断定」は、いずれもWikipediaですら「可能性」に留まる言及です。ところがWikipediaで一次資料とされているRevelations from the Russian archives(Washington: Library of Congress, 1997)を読みますと、百田氏やWikipediaが予想しているような「ソ連の活動団体説」というのは説得力の無いことが解ります。

一次資料には何と書いてあるか

というのも、「ベ平連」が主導した米脱走兵支援について、確かにソ連側資料のうちに「ベ平連」がソ連側に協力を求めていた旨は記録されています。

しかしよく考えてください。米脱走兵をソ連領土に逃がす計画ですから、事前にソ連側と連絡を持つことは当然のことです。ですから、これだけで「ベ平連」をソ連の活動団体と憶断することは陰謀論に過ぎません。事実、肝心のKGB側資料には「委員会(ベ平連)自身の資源を使って達成することを計画している」と説かれており、KGBは「ベ平連」を独立した組織であると認識しています。

The Beheiren leaders are planning to accomplish the transportation of this group of Americans from Japan to the territory of the Soviet Union using the committee’s own resources.

【訳】「ベ平連」のリーダーたちは、このアメリカ人グループの日本からソ連の領土への移送を、委員会(ベ平連)自身の資源を使って達成することを計画している。

Koenker, Diane P., and Ronald D. Bachman (eds.), Revelations from the Russian archives: Documents in English Translation, Washington, D.C. : Library of Congress, 1997, p. 699.

つまり「ベ平連」は、米脱走兵をソ連に逃がす計画を円滑に進めるため、ソ連側に理解と協力を求めただけであって、これだけの事実を以って「ベ平連」が「ソ連の活動団体」であると断定することには論理的飛躍があるでしょう。

「ベ平連」当人側からもこのようなスパイ説が間違っていると反論記事が出ています。その重要な箇所の要旨をあげます。

1965年11月16日、ベ平連は、米『ニューヨーク・タイムズ』紙に1ページの反戦広告を掲載しました(左の写真)。確かに、「反戦団体が全面意見広告を掲載するのは異例の事態」であったことは、この時期に言えるかもしれません。しかし、それはこのために日本全国から約2万人から250万円もの募金が集められたものだったからです。 この意見広告のために「ソビエト連邦のKGBから資金提供を受けていた事実」などは、まったくありませんでした。

意見広告――ウィキペディアでのベ平連への意図的歪曲報道。近く室謙二さんから反論の出版。

この様に『日本国紀』における「ベ平連」の記述には、印象操作と捉え兼ねられない憶断が含まれており問題的であると言えるでしょう。改訂版が出される時には、これら一次資料に当たり、公平性のある文章になることを期待します。

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