【論評】百田尚樹氏と有本香氏の発言を受けて——『日本国紀』問題の節目

百田尚樹氏の発言を評価する

昨日は、百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)をめぐる諸問題でターニングポイントとなる日でした。11月20日の虎ノ門ニュースにて、百田尚樹氏が、司会者を遮り、突然、『日本国紀』のWikipediaコピペ問題について、これを認める発言をしたのです。

一番腹立ったのは、百田のこの本は、Wikipediaからパクってコピペしとると。これが腹立ってね。僕ね、この本書くのに、どれだけ資料揃えたかと、山のように資料揃えた。そんなかにはねWikipediaもそりゃあるよ。そりゃWikipediaから引用したもんとか、借りたもんとかある。でもねそんなもんはこの本の中の零点何パーセントなんですよ。これ原稿用紙でだいたい800枚くらい以上なんですけど、まぁWikipediaから借りたものなんていうのは原稿用紙なおすと、まぁ1ページ分か、せいぜい2ページあるかないか。……そう、それをね、もうネット上で、これも、これも、これもって、でもね、それもね、大半が、それ「歴史的事実」やし、誰書いても一緒の話や。

【DHC】11/20(火) 百田尚樹×上島嘉郎×居島一平【虎ノ門ニュース】

その後、ツイッターで次のように本ブログに言及しながら呟かれました。

まさか当代随一のストーリーテラーに言及いただけるとは、一ファンとして光栄の限りです。この二つの発表を検討すると、Youtubeとツイッターとで原稿用紙数(なお有本氏は700枚と言及)や引用文量などについて錯誤がありますが、Wikipediaを断り書きなく引用していたことを認めたという点で一致しています(また虎ノ門ニュースでは自著に間違いが数カ所ある事にも言及しています)。

本ブログではこれまでこのWikipediaコピペ問題を追及していましたが、その真正性を百田氏自身が認めたことは大きな成果といえるでしょう。

これと同時に、百田氏が(言い訳を交えてではありますが)自身の過失を認めたという点について我々は評価するべきです。論壇の世界というのは摩訶不思議なところであり、自らの誤りを認めたり、謝罪するというようなことは殆どありません。そのような中にあって、敢えて司会者を遮り、事実関係について弁明されたことは百田尚樹氏の良心に基づくものであると信じます。

これまでも本ブログ(およびツイッター)で私は、このコピペ問題(および錯誤的記述)について、百田氏が早急に誤りを認め、天下に謝罪する必要がある旨を述べてきました。私は常々、自身に誤りがあれば素直にこれを謝罪すること、そして相手の謝罪にはこれを寛容に受け入れることが重要であると考えています。この気持ちは今も変わりません。ゆえに困難な状況にあって自らの誤りを認めた点について、私は百田尚樹氏に尊崇の念を表します。

有本香氏の発言を評価する

一方、『日本国紀』の編集者である有本香氏は、自らの誤りを認めるのみならず、謝罪もしました。かつて有本氏は、コピペ問題に言及する取り上げて「悪質な誹謗ツイート」と攻撃していました。

百田氏自身がパクリを認めた今となっては虚しい言説です。この有本氏のツイートを字義通りに信じるならば、このツイートをした段階ではパクリがあったことを未だ知らなかったことになります。これは今後の責任問題などを考えるうえで重要な論点となるでしょう。

しかし百田氏が自白したとあっては、有本香氏もこれを認めないわけないはいけません。百田氏のツイートのあと有本氏は、自身を含めた編集側の校正ミスがあったことを認め謝罪しました。

ここでの「私含む編集側の校正ミスがあった」が何を意味しているのかまだ解りません。コピペに気が付かなかったことなのか、それ以外の錯誤的記述を見逃したことなのか解りません。しかしミスを認め「読者の皆様にお詫び申し上げる」と謝罪したことは大変重大な意味を持つでしょう。

そして、既に申した通り、このような状況下にあって、過ちを認めたのみならず、それに対して謝罪までしたという事実に対して、私は有本香氏に尊崇の念を表します。

今後どうなるのか

ある意味で、百田氏がWikipediaからのコピペを認めたことで、『日本国紀』をめぐる論争は一つの節目を迎えたのではないでしょうか。今後は個別的なコピペ箇所の洗い出しよりも、過ちを認めた百田氏と有本氏、そして発刊した幻冬舎がこれらにどの様に真摯に対応していくのかが注目されていくでしょう。

また百田氏がWikipediaからの引用を認めたことは、本書に対する評価を今後厳しくすることを想起されます。既に有本氏は左右両側の論客から「日本国紀について真意をはかりかねるコメント」を頂いたそうです。

イデオロギー的に不可解としか表現しようのない本書が、何十万部も売られてしまったことは、今後の保守論壇における分裂・分断までも起こしかねません。

有本氏は本書を「歴史戦の狼煙」と表現されていたそうですが、まさにその通りになるでしょう。多くの読者が『日本国紀』の影響を受けることは必須です。これまで保守論壇が進めてきた歴史戦に大きな転換点が訪れたように思えます。

『日本国紀』が建設的な議論の礎になることを願っています。そしてそのためには、百田尚樹氏、有本香織氏、幻冬舎の真摯な対応こそが肝要であると確信します。

【追記】その後、幻冬舎側に本書の問題点について公開質問状を送付いたしました。仔細については下記の記事を参照ください。

【悲報】『日本国紀』、「同人用語の基礎知識」「ニコニコ大百科」までも参照・コピペか【日本コピペ紀】

2018.11.19

【まとめ】百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)の関連記事まとめ

2018.11.17

【日本コピペ紀】Wikipediaやウェブサイトなどとの類似表現報告まとめ【日の丸すら】

2018.11.16

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