トンデモ保守によるトンデモ少子化・晩婚化対策(加瀬英明氏の場合)

保守重鎮による少子化対策・晩婚化対策

時折保守や政治界によって惹起される「日本のために女は子供を産め」的発言が代表するように、彼らは少子化や若年層未婚率に非常に神経をとがらせています。さらに保守の傾向が色濃くなると、結婚や家族の有り方にまで口を挟みだします。保守の重鎮・加瀬英明氏は、次のように『女性の深層心理』や『日本改造法案大網』の書籍を引用して、自身の見解を代弁させています。

おぞましい社会だ。…「かつて女性は十人近くの子を産んで、育てるエネルギーを持っていたが、いまでは二人、三人しか生まないので、あり余ったエネルギーを、禄でもないことに費やして、社会を混乱させている」(大意)と警告している。……「夫人は家庭の光にして人生の花なり。(略)婦人が男子と等しき牛馬の労働に服すべき者ならば点は彼の心身を優美繊弱に作らず」と、説いている。
私も女性がビジネスの世界で、「牛馬の労働」に服すべきではないと思う。

 加瀬英明「日本の母、日本の父を考える 男気はどこへ行った?」

つまり「女は外で働かずに子供を産め、それが仕事」という理論です。この理論を円滑に進めるために、加え保守にとって結婚や出産は「個人」や「夫婦」の問題なのではなく、「国家」や「一族」の問題に昇華されます。今回はそんな少子化・若年層未婚という国家問題に対する、加瀬英明氏のお言葉に耳を傾けてみましょう。

なぜ結婚できないのか?⇒男らしい男がいないから

加瀬氏による晩婚化・少子化問題の解決法は単純明快です。「男らしい男が多ければ」解決されると述べています。

きっと、若い男性に魅力がなくなってしまったからなのだろう。男らしい男が多ければ、晩婚、少子化がもたらされるはずがない。

 マンリオ・カデロ×加瀬英明『世界で一番 他人(ひと)に優しい国・日本』祥伝社, 2016, p. 193

なお同氏の同記事によれば、褌(ふんどし)が男らしさの象徴であると説明されていますので、今の日本男性が褌を締めれば「男らしさ」がでて、晩婚化・少子化が解決されるとお考えなのかもしれません…。そんなバカな。

【トンデモ】女から箒(ほうき)、男から褌(ふんどし)が失われて日本はダメになった説(マンリオ・カデロ×加瀬英明『世界で一番 他人(ひと)に優しい国・日本』祥伝社, 2016)

2018.11.08

記紀神話の時代は皆結婚できていた

そして、加瀬氏は、昔の日本では出産奨励金や家族手当が無くても結婚できていたと主張するのですが、ここであげている例が記紀神話におけるイザナギとイザナミの結婚だからこれは酷い。

どうしたら少子化を阻止することが、できるものだろうか。日本列島を生んだ伊弉諾命と伊邪那美命は、出産奨励金や、家族手当が無かったのに結ばれた。収入だけでは、所得が高い公務員の結婚難を説明できまい。

 加瀬英明「少子化によって国を滅してはならない」『月刊カレント』55(4), 2018.4

記紀神話に説かれる結婚事例を、現代社会に当てはめて何の意味があるのでしょうか? もしや保守という不可思議な世界では、こういう比較に説得力があるのかと思うと恐ろしいものがります。私からしてみれば「ライトノベルの中で主人公は俺TUEEEでハーレム状態なのに、どうして現代人は男らしさがなくて晩婚化・少子化が進むのか?」と同レベルの議論です。

現代の結婚は一過性の快楽のためのもの

さらに、現代日本文化を毛嫌いする加瀬氏は、今日の結婚を次のように位置づけます。またこれがトンデモない。

現行憲法によれば、親や兄弟や、一族は、二人の結婚とかかわりなく、二人の結婚に干渉してはならないことと、されている。
今日では結婚は、男女二人の一過性の快楽のために行われる、軽い結びつきに変わった。

 加瀬英明「少子化によって国を滅してはならない」『月刊カレント』55(4), 2018.4

二人が人類を未来へ継いでゆくために、結ばれることがなくなってしまった。
結婚相手として、ふさわしい配偶者ではなく、自分本位に自由に相手を選ぶことによって、結婚と家族が切り離された。
だた、世界のどこへいっても、結婚は今日のように一時的な快楽ではなく、家や、社会に対する務めであって、神聖な行為だった。

 加瀬英明「少子化によって国を滅してはならない」『月刊カレント』55(4), 2018.4

結婚は責任を伴い、自制と節度を必要とした。人類を存続させるためという、暗黙の了解があったにちがいあい。
結婚までが、刹那刹那の楽しみを求めるものとなった。

 加瀬英明「少子化によって国を滅してはならない」『月刊カレント』55(4), 2018.4

今日では結婚は、男女二人の一過性の快楽のために行われる」って、今日の結婚が風俗店通いであると言わんばかりの発言です。いったいどうすればそのような理論がまかり通るのでしょうか。もしや、この人の周りの方々の「結婚」とはこういうレベルで行われているのでしょうか???

言動不一致な加瀬氏の結婚

このように加瀬氏にとって結婚は、個人間の問題ではなく、社会に対する務めであって、神聖な行為なのだそうです。ですから眞子様と小室氏との結婚を次のように評価します。

眞子内親王殿下と小室氏は、秋篠宮殿下にも、宮内庁にもはかることなく、あきらかに2人だけのあいだで、結婚を決めたのだった。

ひと昔、4、50年前だったとしたら、2人が駆け落ちしたのだった。

私はあってはならないことが、起ったと思って、強い衝撃を受けた。

「加瀬英明のコラム」メールマガジン(2018.2.26)

いやいやいやいや。この度の結婚は天皇陛下からちゃんと裁可を得ているだろうと。陛下の裁可を得ている以上は、皇室として認めているわけだから「2人だけのあいだで、結婚を決めた」のでも、「駆け落ちした」のでもないのは明らかで、一体この人は何の情報をもとにこんなことを言っているのでしょうか。天皇陛下のお言葉を無視するとは、トンデモない保守ですな。

さらにトンデモないのは加瀬氏ご本人の結婚の逸話。

条件によっては一緒になるというのでは、商取引と同じではないか。私は妻に「黙ってついてこい」といって、口説いた。

 マンリオ・カデロ×加瀬英明『世界で一番 他人(ひと)に優しい国・日本』祥伝社, 2016, p. 194

おいおいおいおい。「黙ってついてこい」って、それこそ結婚が「家や社会に対する務めであって、神聖な行為」であるという自信の言葉に反しているだろうと。

このように「保守なのに天皇のお言葉を貴ばない」、「結婚は家・社会のためにすべきと言いながら、自分は「黙ってついてこい」と言って結婚してまう」という、現代保守の言動不一致が集約されているような加瀬氏なのでした。こんな勢いだけの精神論を語ってばかりだから、晩婚化・少子化がいつまでも回復しないのではないでしょうか。

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