【書評】『「日本国紀」の副読本:学校が教えない日本史』の内容紹介と感想、評価、雑感。

『日本国紀』の副読本

本日、話題沸騰の『日本国紀』の副読本、その名も『日本国紀」の副読本:学校が教えない日本史』(産経新聞出版, 2018:以下、『日本国紀副読本』)が書店に並びました。

本書は、『日本国紀』の著者・百田尚樹氏と、編集者・有本香氏の対談本という形式です。

本ブログではこれまで『日本国紀』のコピペ問題などを散々指摘してきましたが、その騒動のさなかに副読本を刊行とは恐れ入ります。

本記事ではまず、この『日本国紀副読本』の全体像の概略を述べたいと思います。

目次

なぜかAmazonにも産経新聞出版のHPにも、『日本国紀副読本』の目次があがっていませんでしたので、細目も併せて以下に挙げます。

まえがき 百田尚樹
序章 なぜいま『日本国紀』か
 ・なぜ国を誇りに思う歴史教育がないのか
 ・「この国に生まれでよかった」
 ・予約段階でアマゾン一位を独走
 ・「この国の歴史」ではなく「私たちの歴史」
 ・民衆の反乱
第1章 歴史教育とGHQの申し
 ・局地戦と民族の物語
 ・何を書いて、何を書かないか
 ・「李舜臣は世界三大提督」の嘘
 ・教科書で韓国の顔を立てる理由
 ・「南京大虐殺」が現れて任那日本府が消えた
 ・“近隣諸国条項”と同じマインド
 ・占領軍が行った焚書坑儒
 ・「戦犯を助けよう」
 ・戦争を知っている世代
 ・社会に出たGHQの子供たち。
 ・八〇年代の政治家つるし上げ
 ・家で修正された歴史観
第2章 歴史は「物語」である
 ・年表は歴史ではないフィクションという意味ではない「物語」
 ・駄目なところがあるのが「物語」
 ・自分史を書くように
 ・学者は怖がって「I」を消す
 ・通史は小説家の仕事だと思う
 ・寄せ集めでは物語にならない
 ・ハルキストとナオキスト
 ・村上さんが通史を書いたら
 ・いまの日本史には怒りも悲しみも喜びもない
第3章 消された歴史
 ・なぜ敗戦がたった一行なのか
 ・元冠を大きく取り上げた理由
 ・自分を奴隷として売った愛国者
 ・日本人の生き方が消された
 ・ばらばらの歴史では流れが見えない
 ・ペリーの黒船は来るのがわかっていた
 ・「ペリー来なければいいなあ」がない
 ・平安時代の平和ボケ
 ・幕末の平和ボケ
第4章 日本人は駄目だけどすごい
 ・提灯屋が蒸気船をつくった日本
 ・消された小栗上野介
 ・田沼意次を再評価
 ・無名の人の力
 ・自前主義と誠実
 ・戦国の強さがあったから鎖国できた
 ・「ことを荒立てるな」はそっくり
 ・「幣原外交」といまの政治家
 ・「犬のお伊勢参り」は日本文化の象徴
 ・これぞ日本人
第5章 日本人はなぜ歴史に学べないのか
 ・『日本国紀」の隠しテーマ
 ・韓国を助けるとろくなことにならない
 ・自虐史観と反日教育のなかで
 ・韓国の約束破りは続く
 ・韓国を甘やかしてきた日本
第6章 「負の歴史」を強調する教科書
 ・「朝鮮王宮を占領して、清との開戦へ」
 ・壬午事変も天津条約もすっ飛ばし
 ・なぜか讃えられる倭冠の青年
 ・「ハングル」をわざわざアピール
 ・恫喝外交が通交希望に
 ・消された「文禄の役」「慶長の役」
 ・不確かな韓国人「沙也可」
 ・徴用工と慰安婦問題が
 ・独立マンセー
 ・「負の歴史」を教える教科書
第7章 ベストセラー作家の秘密
 ・「一人ブラック」の自覚がない
 ・百田尚樹はモンスター感がすごい
 ・法則のない天才
 ・「あしたの朝までに書いといて」
 ・スロースターターの執揃なダメ出し
 ・執筆は彫刻と同じように
 ・歴史は「脇道」だらけ
 ・道が見えない幕末
 ・素晴らしかった監修者
 ・歴史の重要性
 ・民族の歴史を守る
 ・善良な人が自虐史観に侵されている
終章 日本史の中の異質なもの
 ・「全面講和」と「単独講和」
 ・なぜ自民党ができたのか
 ・国民を守らず、憲法を守る
 ・なぜメディアはWGIPを語らないのか
 ・戦後権威の欺瞞
あとがき 有本香

全体の内容

全体を通して解ることは、この『日本国紀副読本』は、『日本国紀』の「副読本」というよりも、むしろ歴史教科書批判の書という性格を持っていることです。

やり玉に挙げられるのは、「山川出版社」と「学び舎」の歴史教科書。

ただし、山川出版社の歴史教科書については主にその不十分性が批判的に言及されるだけなのに対して、学び舎のそれについては内容の反日性(韓国目線)が直接的に批判されています。

また、学び舎の歴史教科書は本文に直接引用・批判されていますが、山川出版社の歴史教科書への言及は本文と関係なく編集者が後から表として挿入したものです。

今後、これら言及・批判箇所を仔細を考察する予定ですが、今回は一先ずそのリストを提示しておきます。

  1. 李舜臣・朝鮮侵略(山川批判)
  2. 南京大虐殺(山川批判)
  3. 慰安婦・強制連行(山川批判)
  4. 任那日本府(山川批判)
  5. 鎌倉幕府・万葉集(山川批判)
  6. 敗戦(山川批判)
  7. 蒙古襲来(山川批判)
  8. ペリー(山川批判)
  9. 刀伊の来襲(山川批判)
  10. 日清戦争(学び舎批判)
  11. 倭寇(学び舎批判)
  12. 朝鮮王朝の成立(学び舎批判)
  13. モンゴル帝国と東アジア(学び舎批判)
  14. 豊臣秀吉による朝鮮侵略(学び舎批判)
  15. 韓国人「沙也可」(学び舎批判)
  16. 徴用工と慰安婦問題(学び舎批判)
  17. 独立マンセー(学び舎批判)
  18. サンフランシスコ講和条約(山川批判)
  19. 安保条約改定(山川批判)
  20. 日本国憲法(山川批判)
  21. 戦後民主化政策(山川批判)

隠しテーマ

内容についてはそれほど真新しいことは記述は無かったのですが、第5章「日本人はなぜ歴史に学べないのか」の冒頭部に、『日本国紀』の隠しテーマが幾つか挙げられていました。

  1. 日韓関係
  2. 平和ボケ
  3. 経済問題

このうち、①「日韓関係」については隠しも何も普段の二人の言動をみていれば明らかでしょう。

また、②「平和ボケ」については、既に本ブログにおいて検討した通りです。『日本国紀』では、外患に対する文治的・人命尊重的・日和見的態度を「平和ボケ」と表現して厳しく非難し、逆に断固とした武断的態度を高く評価します。

おそらくこれは憲法九条改正への布石と見て間違いないでしょう。

『日本国紀』の隠しテーマは「憲法九条改正」

2018年12月8日

有本氏が『日本国紀』の下書き

そして、『日本国紀』の最大問題であるコピペ問題やコッソリ改変問題といった道義的問題については無言でした。

その代わり第7章「ベストセラー作家の秘密」で百田尚樹氏と有本香氏が自画自賛し合うとても恥ずかしいチャプターが設けられています。

そのなかに興味深い記述がありました。

有本 …「調べろ」とか「これは有本さんが下書きを書け」とか言われる。

百田尚樹×有本香『「日本国紀」の副読本:学校が教えない日本史』産経新聞出版, 2018, p. 211.

どうやら有本氏が『日本国紀』の下書きをしていた箇所があるようです。そういえば別の記事で言及しましたが、コピペ問題について何故か有本氏が百田氏に謝罪している一幕がありました(関連記事)。

これらの証言を総合するならば、『日本国紀』の原稿製作段階で、有本氏の関与が非常に大きかったこと、いわばコピペ問題の責任の一端が有本氏にもある可能性が高いことが確認されます。

その他の個別的問題については記事を別にして書評していきたいと思いますが、大本営的発表を鵜呑みにしないのであれば、ビジネス保守の一面が知れる貴重な資料になるかと思います。

どうやら百田氏と有本氏は、歴史教科書問題を次の漁場として定めていることは疑いないでしょう。

【日本国紀】ありもしない海外要人発言を「創造」してしまう。にもかかわらず、なぜか信者は「その話は現地人なら誰でも知っている」と主張。

2018年12月26日

【まとめ】百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)の関連記事まとめ

2018年11月17日

【トンデモ】特攻隊から道徳を教える(大角勝之「特攻隊の遺書から授業で無私を教える」『思春期に「無私」を教える道徳授業』明治図書, 2006)

2018年10月23日


16 件のコメント

  • 編集者なのに(編集の仕事を馬鹿にしているわけではありません)有本氏の態度がなんであんなにデカいのか以前から疑問だったのですが、納得しました。ありがとうございます。

    • このブログで数々なされている真っ当な批判を試しに貴方が直接指摘して来て下さい。
      百田氏は即ブロック。
      有本氏は徹底無視。
      という対応をきっと受けることでしょう。
      それに、批判・論評というのは別に、本人たちに届けることが目的なわけでは必ずしもありませんし。

  • > おそらくこれは憲法九条改正への布石と見て間違いないでしょう。

    「おそらくこれは…間違いない」なんて日本語は、使わない方がいいんじゃないでしょうか。

  • ろだんさん、さっそくありがとうございます。小生は、百田・有本の炎上商法に加担するのがシャクなので買いませんが、貴兄の分析を楽しみにしています。まあ、予想どうりの我田引水の自画自賛本のようですね。

  • 「ビジネス保守」「ビジネス右翼」って何ですか?意味不明。
    「ビジネス」にも、「保守・革新」「右翼・左翼」があるということですか?
    「ビジネス」というのを「金儲け」とみているのなら、「金儲けのダシに保守(右翼)してる」ともよめますがーー。
    「革新」とか「左翼」って、金儲け(ビジネス)できないんですか?

    • どこかの方のように目先の金ほしさに嘘だらけの本を売るなんて真似は、
      古き良き日本人の心を持つ左翼にはできませんからね。

  • 目次を見てみましたが、やはり日本の素晴らしい古代がないです。百田さんと有本さんが、自分達で言っているWGIPの洗脳から抜け出さないといけないです。WGIPは徹底的に中韓と仲良くさせない洗脳を徹底的に行ったのです。中韓と日本が仲良くなったら困るのです。その結果が反日教科書であり、百田さんと有本さんの書籍です。その洗脳とは、日本は単一民族だという洗脳です。日本は多民族国家というのが常識です。中韓を非難していますが元をたどれば同じ民族です。
    中国、朝鮮系の人々が大多数ですが、その中に古代イスラエルの人達がいるというのが日本です。遺伝子レベルでは日本は中国、韓国の人達にはないY遺伝子が多くみられます。
    その遺伝子はイスラエル人と元を同じくする「神の遺伝子」といわれるYAP遺伝子です。
    世界で一番ユダヤ人がいる国は、中国、朝鮮の人達と混血していますが間違いなく日本です。
    失われたアーク(契約の箱)は日本にあると言われています。神輿はそのレプリカです。
    ヘブル語と日本語の類似は物凄くあります。京都は平安京なのですが、ヘブル語にするとエルサレムです。
    日本は本当に不思議な国です。日本は世界最古の文明を持つ国です。日本の古代を知れば日本に誇りを持ちます。

      • 「失礼ですが、頭大丈夫ですか?」なのですが、
        理由を言わないと分からないです。理由なしに「頭大丈夫ですか?」なのですか?
        「日本は素晴らしい」と言ったら腹が立つのですか?
        どうしてそのような思考になるのだろうか?あなたは外国人なのですか?
        日本人で日本に誇りを持てないのは本当に不幸なことです。

  • 〔校正〕
    × 大本営発表的を鵜呑みにしないのであれば
    ○ 大本営発表的に鵜呑みにしないのであれば

    × 貴重な一緒になるかと
    ○ 貴重な一書になるかと

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