【トンデモ】コミンテルンに操られた朝日新聞が大東亜戦争とモリカケを(略【中西輝政×長谷川熙】

森羅万象何にでも陰謀を見出す

コミンテルンの専門家・中西輝政氏は、この世で起こる万事の背景にコミンテルンの陰謀があるのではないかと心配しています。同様に、朝日新聞の専門家・長谷川熙氏は、この世で起こる万事の背景に朝日新聞の陰謀があるのではないかと心配しています。

この二人が対談すれば、コミンテルンと朝日新聞のどちらが黒幕かをめぐって議論・討論になるのではなく、この両者の説は調和的に融合します。つまり、この世における現象の背後にコミンテルンと朝日新聞の両者がいるという新たな陰謀論が生まれるのです。

今回は、中西輝政×長谷川熙「国際共産主義に操られる朝日新聞【モリカケも!?】」『Will』(2018.10)を取り上げながら、そんな不可思議な現象を追ってみたいと思います。

コミンテルンの陰謀

お二人の対論は、まず「コミンテルン」問題は歴史研究の禁忌とされていると主張されるところからスタートします。

長谷川 コミンテルンを扱うことが、日本ではまだ禁忌視されていますね。

うーーん。「コミンテルン」ネタって、渡部昇一氏、田母神俊雄氏などをはじめとする、この頃の保守論客がガンガン言及していて、ちっとも「禁忌」ではないような気がするのですが…。

中西 日本の学会、メディアをはじめとする知的空間において、いまだにコミンテルンは「腫れ物」扱い。理性的、実証的に歴史を論じるはずの研究者でさえ、「コミンテルン」を前にすると研究や議論が及び腰になってしまいます。

うーーーーん。むしろ「腫れ物」扱いされている理由は、何でもかんでも「コミンテルン」の陰謀にしようとする保守論客が、そもそも「知的空間」におらず、「理性的、実証的に歴史を論じ」ていない証拠のような気がします。

さらに微妙に秦郁彦『陰謀史観』(新潮社, 2012)を意識した発言まで見られてなかなか興味深い。

中西 日本の一部の歴史家のように、「コミンテルン」と聞くと最初から「陰謀論」と決めてかかるようでは、歴史の真実は見えません。
長谷川 日本の研究者は無知なのか、それとも故意に真実を葬り去ろうとしているのか。
中西 一つは不勉強もあるでしょうが、もう一つは、今も次々に出てくる新資料によって自らが唱えてきた従来の”通説”が覆されてしまうのを、ひどく恐れているからでしょう。

どうやら中西氏は、秦郁彦氏から「コミンテルン陰謀論者」として一笑に付されてしまったことを相当根に持っているようです。しかし中西氏から秦氏への反論があったとは聞きません。ぜひ無知で不勉強の秦郁彦氏に「真実」を示して欲しいものです。(しかし秦氏を捕まえて「不勉強」「無知」とはよく言えたものです)

仕組まれた戦争

これに続いて、日米両政府の内外にコミンテルンのスパイがいたという、よく聞く陰謀論が展開されます。もちろん両国にコミンテルンのスパイもしくはその関係者がいたのですから、大東亜戦争は当然の帰結として、コミンテルンの陰謀と決めつけられます。

長谷川 大東亜戦争は、最初から敗北が解っているような戦いでした。これを「戦争」とよんでいいものか。
中西 近年、ヴェノナ文書やヴァシリエフ文章をはじめとする機密文書が次々と公開され、アメリカ政府内に大戦中から大量のソ連スパイが入り込んでいたことが判明しています。……日本には尾崎秀実とゾルゲを送り込み、日米開戦を策略した。つまり日米開戦はコミンテルンによって三方から仕掛けられた、まさに「仕組まれた」戦争だったということが出来ます。

これが本当だとしたら、両国首脳部はよっぽど無能か、もしくはコミンテルンが超絶有能ということになります。「スパイがいた」と「日米開戦した」という二つの事実の間に、無理やり因果関係を見出し、その他の要因を等閑に付すというのは保守の典型的手法です。まして敵の能力を過大評価して、自らを卑下するのは敗北主義であり、自虐史観そのものでしょう。自虐史観脱却を主張する保守こそが自虐史観に囚われている典型です。

モリカケの裏にはコミンテルンと朝日新聞

ここまでは朝日新聞の話などほとんど出てこないで、記事のタイトル「国際共産主義に操られる朝日新聞【モリカケも!?】」の内容は最後のページに駆け足で述べられているだけです。コミンテルンにまつわる空想力が加速して、二人は次のように主張し出します。

長谷川 …コミンテルンの亡霊が今も尚なお、日本では介しているような気がしてならないからです。
中西 戦後の日本では、憲法改正をはじめとする、国家として再生するための重要な試みがよく解らない不合理な理由で頓挫する、というようなことが度々起こっています。
長谷川 意識してか、それとも無意識かはわかりませんが、「モリ・カケ」という倒閣運動すら、コミンテルンの工作先述の精神が影響しているようにみえなくもありません。……そう考えると、朝日も「アンウィッティング」(註:政治家、文化人、ジャーナリストを動かすことに特化した戦略)のまま、コミンテルンの罠にまんまと嵌っているのかもしれません。

ここでようやく「コミンテルンに操られた朝日新聞が、倒閣運動である森友・加計問題を持ち出して、憲法改正をはじめとする国家再生の試みを頓挫させている」というSF小説の骨子が披見されました…。

妄想と妄想がかけ合わさって更なる妄想が生まれる瞬間を我々は見ました。そして「重要な試みがよく解らない不合理な理由で頓挫する」という中西氏の言葉から、「この世で起こる不都合な事件の裏側に何か理由を求め、架空の敵とストーリーをつくって安易に因果関係を説明してしまう」陰謀論者が姿を確認することができると思います。

【トンデモ】朝日新聞陰謀論まとめ

2018.10.25

2 件のコメント

  • 虎ノ門ニュースで江崎道朗氏は「ヴェノナ文書の和訳本はない」と言って英語の本を見せていましたが、
    「ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動 ジョン・アール・ヘインズ著 ハーヴェイ・クレア著 中西輝政監訳」というのがネットで売られています。
    “税込価格 3,456円(本体価格3,200円)
    内容 1930年~40年代、アメリカに潜入したソ連スパイの電報の暗号を解読した米国家安全保障局(NSA)の記録文書が、邦訳で公開される!
    解説
    「ヴェノナ」とは、1943年にアメリカが始めたソ連の暗号傍受・解読作戦の名称である。
    本書は「ヴェノナ」解読文書の元となった通信文から、ソ連のスパイ活動の全貌を暴く画期的な一冊。
    いち早くその重要性を指摘した中西輝政氏らが本邦初翻訳を試みたものである。
    東西冷戦後、原著者らの努力で「ヴェノナ作戦」の成果が公表され、世界中の歴史家に衝撃を与えた。
    第二次世界大戦時の同盟国ソ連が百人単位の規模でアメリカにスパイを送り込み、外交、軍事、産業上の機密情報をことごとく盗み出していたことが分かったからである。
    当時のルーズベルト政権は、完全にソ連の工作の影響を受けていた。そしてアメリカの軍事機密がソ連に筒抜けだった事実は、日本にとって何を意味するか。
    ソ連はアメリカの原爆プロジェクト「マンハッタン計画」を事前に把握しつつ、1945年8月6日の広島への原爆投下を見届け、
    同月8日に対日宣戦布告を行ったということである。“
    というものです。

    どうして江崎氏は和訳本があるのにないなどというのだろうか?和訳本が読まれたら都合が悪いのだろうか?
    江崎道朗氏は日本国紀の監修者になっていますが、コピペと言われるからなのだろうか?
    調べたらすぐ分かることなので、ウソを言うのは本当に良くないです。

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