【日本国紀の間違い】日本政府や軍部は民族差別をしなかったのか?

日本は人種平等を目指した云々

保守界隈では、国際連盟規約に日本は「人種差別をしない」という文章を入れるように提起したとか、日本は大東亜戦争は植民地解放を目指した戦いであるとされ、日本は西欧列強・白人植民地主義に立ち向かった唯一のアジア有色民族国であると定義されます。

ですから杉原千畝がユダヤ人脱出に手助けした美談などは、この日本の人種平等の精神を象徴するものとして語られる場合があります(神武天皇にこの精神の起源を求めるトンデモ説もしばしばあります)。

百田尚樹『日本国紀』もこのセオリーに則り、杉原千畝らによるユダヤ人救済活動を評価して、日本政府と陸軍が人種平等の精神に基づいていたと次のように評価します。

当時の日本政府にも陸軍にも民族差別の意識がなかったこと、そして人道主義の立場を取っていたことがうかがえる。

百田尚樹『日本国紀』幻冬舎, 2018, p. 379(第5刷)

しかしこの理解が間違いであると指摘し、詳細な資料を提示したのはHiroshi Matsuura氏です。今回はこれをモーメントにまとめたので紹介したいと思います。

戦前・戦中の日本に、民族差別の意識は無かったのか?

まとめ

言われてみれば、杉原千畝が外務省の意向に逆らってユダヤ人にビザを発行したため、その後、不遇だったことはよく知られていますよね。ですから杉原千畝の事例を以って、日本政府が民族差別の意識がなく、そして人道主義の立場にあったとするのはやや理論が飛躍していますね。このような論理齟齬が多く見られることが本書の評判・評価を落としてしまっています。

主語と述語の範囲を大きくしてしまう保守論壇の悪い癖が、『日本国紀』においても現れてしまっているようです。確かに人道主義に則って行動した人も多くいたことは事実です。しかしそれをもって日本政府(や陸軍)がそうであったと規定することは正しい理論ではないでしょう。

なお本箇所をめぐる、違う切り口からの考察については、下記の記事を参照ください。

【3%超え】Wikipediaなどからのコピペ量を計算してみた【日本コピペ紀】

2018.11.21

【まとめ】百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)の関連記事まとめ

2018.11.17

【日本コピペ紀】Wikipediaやウェブサイトなどとの類似表現報告まとめ【日の丸すら】

2018.11.16

4 件のコメント

  • 個人的には戦前の日本人、及び日本軍人は
    1.他民族に対する優越意識、特にアジア人に対しては戦後の「名誉白人」的な意味合いでの優越意識が確実にあった。
    2.自国民に対しても、自身が重視する基準や規範(とりわけ武士道)を満たさない人物に対しては強い蔑視と偏見を隠さなかった。
    3.ただし、特定の民族を宗教や政治的思想を根拠として根絶やしにしようという意志はなかった。「我々から進んで彼らをより良い方向へ導かねばならぬ」的な発想から行われる、いわゆる「同化政策」をどう捉えるかによってかなりの振れ幅はあるかとは思うが・・・。

    ・・・という感じで捉えてます。

    2については「(現代的な視点から見た)弱者を救済できるよう最大限努力するという思想がない」事にも繋がりますし、3は「たまたまそういう方向に転がす狡猾で悪意ある指導者がいなかったorごく少なかっただけで、一歩間違えればミルグラム実験やスタンフォード監獄実験における最悪の結果が元来容易に発生しうる国民性だったのではないか」とは感じています。私個人は「良くも悪くも日本人は変わっていない」という考えなので、戦前と同じ人命軽視や思想強要の過ちは、現代においても人心誘導のやり方次第で容易に再発しうる(パワハラやモラハラと言う形で現に発生しているものもある)だろうとは思っているのですけどね・・・。

  • 論壇ネットさんは、“国際連盟規約に日本は「人種差別をしない」という文章を入れるように提起した”を間違いだと言っていますが、
    ウィキペディアには、“人種的差別撤廃提案(Racial Equality Proposal)とは、第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会において、
    大日本帝国が主張した、人種差別の撤廃を明記するべきという提案を指す。この提案に当時のアメリカ合衆国大統領だったウッドロウ・ウィルソンも賛成だったが、
    イギリス帝国の自治領であったオーストラリアやアメリカ合衆国上院などが強硬に反対し否決された。
    国際会議において人種差別撤廃を明確に主張した国は日本が世界で最初である。”と書かれています。
    論壇ネットさんは事実かどうかを調べてから批判すべきです。どうしてウィキペディアで調べることが出来ないのでしょうか?
    調べたらすぐ事実だと分かることです。

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