【トンデモ】社畜こそ世界一への原動力(『日本商品の世界一物語』国勢社, 1935)


世界が驚く日本

日本製品をひたすら外国人が絶賛しまくるテレビ番組を最近見ましたが、「外国人に認められたい!」「日本は世界一!」という承認要求は、どうも昔からあるようです。

このような自画自賛の系譜は、早川タダノリ『「日本スゴイ」のディストピア:戦時下自画自賛の系譜』(青弓社, 2016)に詳しく載っています。

自画自賛、世界一の商品30

1935年に新聞記事をまとめて刊行された『日本商品の世界一物語』(国勢社)も、そんな自画自賛の系譜にある一書です、次の30種が世界一の日本商品とされています。

①生絲
②綿織物
③電球
④板硝子
⑤セメント
⑥薄荷
⑦サルマタ
⑧自轉車
⑨寒天
➉陶磁器
⑪タオル
⑫蟹罐詰
⑬ゴム靴
⑭硬化油
⑮へちま

⑯除虫菊
⑰アンチモニー製品
⑱テグス
⑲富士絹とポンヂー
⑳貝ボタン
㉑紙製パナマ帽
㉒歯ブラシ
㉓天然樟腦
㉔人造絹絲
㉕南北両洋漁業陣
㉖玩具
㉗綿メリヤス
㉘琺瑯鐵器
㉙養殖眞珠
㉚硝子器

戦前日本の主力輸出品である①生絲はもちろんのこと、かなりマニアックな商品まで取り上げられています。しかし「世界一」の基準があやふやなものも多く、たとえば㉕南北両洋漁業陣については「日本の漁業は世界第一の盛大さ」という極めて主観に基づいた世界一認定をしています。

ブラック企業こそ世界一の原動力

ただし本書は貿易畑の方が書かれたコラムであるらしく、日本賛美一辺倒ではなく、その弱点なども記されており興味深い下りもあります。たとえば世界一の生産量を誇った①生糸については、

日本は世界生絲の七割を産し乍ら、其相場を左右し得ぬ所に根品の矛盾があるのだが、何うして之を矯めて行くか、思へば蚕糸業の前途は甚だ多難である。

『日本商品の世界一物語』国勢社, 1935, p. 6

と述べて、その将来性を患いています。

一方、このコラムが執筆された昭和10年当時、①生絲に代わり最重要輸出物と目されていた②綿織物について、本書は「世界無敵の我綿業」と言葉を尽くして絶賛しています。

しかしその強みを説明する下りは、情けない限りです。日本の輸出産業の強味が次のように説明されてます。

日本人は味噌汁と沢庵を食つて生活し、バラツク建の小屋で安い賃金でよく働く、しかも其仕事の効率は欧米人より高い、これがまた日本工業の持つ絶大な強味で、単に綿布のみでなく、最近の雑品輸出の発展は其最大原因を此処に求めることが出来る

『日本商品の世界一物語』国勢社, 1935, p. 10

つまり、日本人は低賃金でこき使っても文句を言わずよく働くので、外国製品との競争に勝つことができるというのです。日本の輸出産業の発展要因がブラック企業で働く社畜にあったと昭和初期に分析されていたことは、現代の日本を振り返るうえでも興味深いものがあります。

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