【トンデモ】天皇は「神に近い存在」と言わせてしまう中学授業(服部剛『教室の感動を実況中継!先生、日本ってすごいね』高木書房, 2015)

道徳教育とは「日本スゴイ!」を教えること

公立中学校の教諭を務めておられる服部剛先生は、ご自身の教育現場での出来事をまとめて幾つかの書籍を刊行しています。

たとえば、社会科授業の様子をまとめた、『先生、日本のこと教えて:教科書が教えない社会科授業』(扶桑社, 2005)を以前取り上げましたが、ご自身が「歴史教育の目的はやはり、子供たちが日本に生まれてよかったと思えることにある」と述べておられる通り、抱かれている保守的イデオロギーが前面に出た授業であり、必ずしも批判的・客観的な歴史を教えるものではありませんでした。

【トンデモ】特攻隊から感謝を学ぶ授業(服部剛『先生、日本のこと教えて:教科書が教えない社会科授業』扶桑社, 2005)

2018.10.24

今回紹介するのは、同氏による著書『教室の感動を実況中継!先生、日本ってすごいね』(高木書房, 2015)です。そのまえがきに、「未来を担う中学生に日本の良さや日本に生まれた喜びを知ってもらおうと、道徳の授業で立派な日本人や日本の国柄の素晴らしさを教材化してきました」と述べているように、服部氏が抱いている道徳教育のあるべき姿が本書には説かれています。

目次から解る傾向と対策

まずは、その目次を見てみましょう。ここから既に傾向が見て取れます。

まえがき
1「戦場の知事 島田叡~沖縄の島守」役割と責任
2「やまと心とポーランド魂」恩を忘れない
3「エルトゥールル号事件」感謝の心
4「ペリリュー島の戦い」崇高な精神
5「焼き場の少年・一片のパン」人間の気高さ
6「海の武士道~敵兵を救助せよ」生命の尊重
7「日本マラソンの父・金栗四三 三度のオリンピック」努力を続ける
8「佐久間艇長の遺書」役割と責任
9「柴五郎中佐」勇気ある行動
10「上杉鷹山 為せば成る」誠実・責任
11「ユダヤ人を救え 樋口少将と犬塚大佐」差別偏見の克服
12「特攻隊の遺書」先人への尊敬と感謝
13「昭和天皇とマッカーサー」強い意志
14「空の武士道」利他の精神・人間の気高さ
15「日本ミツバチの団結力と日本人の美徳」集団生活の向上
16「板東捕虜収容所 松江豊寿中佐とドイツ人捕虜」寛容の心
17「台湾人に愛された八田與一」公正公平
18「絆の物語~アーレイ・バーク」日本人の伝統精神と集団生活
19 三年間、服部道徳を受けて生徒の感想
あとがき

次の点に気が付かされるでしょう。

  • 明治から終戦期までの話題がともかく多い。
  • 賞讃されるべき何かを為した日本人を紹介する授業がともかく多い。
  • 身近な話題ではなく話のデカい美談が多い。特に自己犠牲モノが多い。

要約すれば、「先生:崇高な精神で危険を顧みず自己犠牲の道を選んだスゴイ日本人がいた⇒生徒:日本に誇りを持った!日本スゴイ!」的な流れの授業がともかく多い。自己犠牲といっても、この先生の授業の場合は「特攻」「玉砕」とか生き死にの問題ですからともかく話がデカイ。いつもこういう教育者を見て思うのは、どうしてクソみたいなことをした日本人を紹介してそこから学ぶという発想はないのでしょうか? なにより、中学生の道徳の授業ですから、より身近なイジメ問題とか扱っても良いような気がするのですが…。

13「昭和天皇とマッカーサー」強い意志

幾つか授業の内容を紹介します。なお、12「特攻隊の遺書」という、保守系道徳必携の特攻隊モノ授業は、以前紹介したものとほぼ同一でしたので、興味のある方は下記のリンクをご参照ください。

【トンデモ】特攻隊から感謝を学ぶ授業(服部剛『先生、日本のこと教えて:教科書が教えない社会科授業』扶桑社, 2005)

2018.10.24

まず紹介したいのは、13「昭和天皇とマッカーサー」の授業です。教材として用いられるのは、もちろん終戦直後に昭和天皇がマッカーサーと会談し、「この戦争は私の命令で行ったものであるから、私だけ処罰してもらいたい」と言い、それにマッカーサーが感銘を受けたというエピソードです。

このエピソードを紹介だけするなら何の変哲もない授業なのですが、先生の「国民の指導者としての昭和天皇の行動をどう思いましたか。また、今の自分とどの様なつながりを見いしますか」という問いかけに対する生徒の感想がスゴイ。一部引用します。(太字は筆者による)

○私の予想通り、昭和天皇はとても立派な人でした。昭和天皇のおかげで今があるのだと思います。マッカーサーが心を動かされたのは無理もありません。私たちは二度も昭和天皇に助けられたのですね。神に近い存在です。私が歴史人物で一番尊敬するのは昭和天皇になりました。(*)服部注…一度目が、終戦の御聖断
○日本の天皇は外国の王様たちとは違ったものである。日本のリーダーではあるけれども、リーダーというより「守り神」のような存在だと思ってしまう。「誠」があって美しいと思った。日本国民で良かった、って安心できる。

 服部剛『教室の感動を実況中継!先生、日本ってすごいね』高木書房, 2015, p. 199, p. 201

この他にも熱気にみちた感想が色々あるのですが、昭和天皇を「神に近い存在」とまで言わせてしまう授業とはいったい…。この先生の授業で、いわゆる天皇の「人間宣言」がどの様に教えられているのか知りたいものです。

同書の子の他の授業については下記のリンクを参照ください。

【トンデモ】自己犠牲の精神は日本人のDNAに刻まれている(服部剛『教室の感動を実況中継!先生、日本ってすごいね』高木書房, 2015)

2018.10.28

2 件のコメント

  • 昭和天皇は超Å久戦犯です。戦争は彼が始め、国体の護持(自分の命を守る)ために戦争を長引かせ、原爆をはじめ国民に多大な被害を齎しました。彼は死刑になるべき存在でしたが、アメリカが日本統治のために利用価値があると判断したために生き永らえました。

    • コメントありがとうございます。昭和天皇戦犯論はいつまでも燻り続けますね…。昭和天皇ご自身も色々と苦悩され、戦後、靖国参拝などを中止されたのかもしれません…。

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