【トンデモ】戦争に勝ったらどうするか?「大東亜共栄圏建設対策案」に説かれる勝利後の見取り図

戦後計画の夢想

アジア太平洋戦争(大東亜戦争)の緒戦での戦果に浮かれに浮かれ軍部もお役所も現実離れした計画を立案するようになりました。たとえば、総力戦研究所という政府系シンクタンクが1942年1月に制作した「大東亜共栄圏建設原案(草稿)」では、勝利後に建設しようとした大東亜共栄圏の姿が、本音と建前が混ざりながら叙述されています。(詳しくは下記リンク参照)

【トンデモ】「もし日本が勝っていたら…」大東亜戦争下における夢想的戦後計画

2018.10.24

「大東亜共栄圏建設対策案」

この「大東亜共栄圏建設原案(草稿)」とよく似たライトノベルは、民間シンクタンクなどによっても複数制作されています。そのうち一資料が『奇聞・太平洋戦争』(文芸春秋, 2015, pp. 106-111)に紹介されていましたので、その概要を紹介したいと思います。

その資料とは、国策研究会という名のイカニモな民間系シンクタンクが、1943年8月に発砲した「大東亜共栄圏建設対策案」です。その内容は、政府系シンクタンクが制作した「大東亜共栄圏建設原案(草稿)」と異口同音ですが、その概要を紹介したいと思います。

まず「大東亜共栄圏建設対策案」では、大東亜共栄圏の合理的範囲について次のように定義されます。

大東亜共栄圏の現段階における合理的範囲としての地域的輪郭を見るに、大東亜共栄圏の範囲は、おおむね、つぎのごとき水陸空を包摂するものなるべきである。
(イ)軍事占領地域を含み、一般に、共栄圏の自明的構成地帯として認めらるるもの全部
(ロ)アリューシャン諸島およびアラスカ(ただし、アラスカは非武装地帯とする)
(ハ)バイカル湖を含む東方ソ連一帯
(ニ)外蒙、新彊、西蔵、青海等一帯
(ホ)西蔵の西境界線より西南して、印度洋にいたる線以東の印度一帯(デリーを含み、また、セイロン島その他、印度洋にある諸島を含むものとし、線の具体的位置は別に考う)
(ヘ)豪州、ニュージーランドその他、南太平洋にある諸島全部(米州沿岸に極めて接着するものを除く)
(ト)ハワイ諸島を含み、北太平洋にある諸島全部(米州沿岸に極めて接着せるものを除く)

途方もなく広い範囲を共栄圏として設定しているところに、現実との乖離が痛いほど手に取るように分かります。

大東亜共栄圏の指導国は日本!

この後、これだけ広い範囲が必要である理由について、外敵からの防衛に必要だの、そのためには地下資源が必要だの、アジア諸国を独立させるだの、人種連帯だの美辞麗句を並べていますが、結局のところ日本を頂点とした植民地的支配が前提となっているのは明らかです。事実、その構成状態を説明する下りでは大東亜共栄圏の指導国は「日本」だけと定められています。

以上に概叙せし大東亜共栄圏構成の一般的考察を基礎とし、いま、各般の事情を勘案して、その具体的構成状態を按ずるに、まず、その平面的構成における相貌、おおむね左のごとし。
(イ)指導国―日本これを担任す。
(ロ)独立国
 (1)既存国家―支那、満州、泰
 (2)新成国家―既約のもの、ビルマ、フィリピン
 (3)特殊存在―仏領印度支那、チモール、カレドニヤ
(ハ)日本所轄地域
直轄地域、土侯地域、その他、いまだ独立を約束せられざる占領地、および、将来占領すべき地域
(ニ)外郭圏
 (1)大東亜共栄圏の外郭―インド、(極東ロシア)
 (2)欧州広域圏の外郭―アフリカのインド洋岸
(ホ)非武装地帯
 (1)米州との間―アラスカ
 (2)ソ連との問―適当の地域
 (3)欧州との間―西アジア一帯

また、「(ハ)日本所轄地域」というのも認められているようですから、結局、戦略上の重要地点は日本が直轄できる余地を残しています。こういう微妙な箇所に、本音が垣間見られるライトノベルであると言えます。

このような夢想は、本土に留まっていた人たちだけでなく、戦場にいたはずの将官たちも同様に抱いていました。要職にある将官が、アメリカ本土占領作戦を立案してしまった話については下記のリンクをご参照ください。

【トンデモ】「アメリカを占領する!」大東亜戦争緒戦における将校たちの夢想的戦争計画

2018.10.24

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