【トンデモ】「アメリカを占領する!」大東亜戦争緒戦における将校たちの夢想的戦争計画

アジア太平洋戦争(大東亜戦争)の緒戦で日本軍は、真珠湾攻撃やマレー沖海戦、東南アジアでの戦いなどで破竹の勢いで勝ち続けました。

あまりにも勝ち過ぎてしまたっため、軍の将校たちは、自軍の能力を過大評価し、一方で連合軍の力を過小評価して、滅茶苦茶な作戦を立案し始めます。たとえば字垣纏中将(連合艦隊参謀長、兼第一艦隊参謀長)は陣中日記『戦藻録』で次のように記しています。

以後知何なる手を延ばすや、豪州に進むか、印度に進むか、ハワイ攻撃と出回かけるか、ないしはソ連の出様に備え好機之を打倒するか。

 字垣纏『戦藻録』原書房, 1968, p. 62

カダルカナルですら泥沼だったのに、豪州(オーストラリア)攻略を夢想するなど、現代からすれば信じられないほど無謀です。この他にもハワイ島攻略やセイロン島攻略の計画が海軍で練られました。しかしいずれも実行不可能な計画であり、現実の能力から明らかに乖離していたため、いずれも計画倒れになりました。

それら夢想的計画の中でも、最も過激で、現実乖離していたものは山口多聞少将(第二航空戦隊司令官)によるプランです。なんとアメリカ本土の占領・空爆を真剣に考えていました。次のような戦争プランです。

(イ)第二弾作戦
五月中旬迄(註:1942年)に印度要地(セイロン島、カルカッタ、ボンベイ)の攻略戦を完了す
七月末迄に「フィジー」、「サモア」、「ニューカレドニヤ」、「ニュージーランド」、豪州を攻略す
成し得れば豪州は謀略をもって大東亜共栄圏に参加する如く指導す
(ロ)第三弾作戦第一期
八月乃至九月の候「アリューシャン」を攻略
十一月又は十二月「ミッドウェー」「コンストン」「パルミラ」を攻略し
十二月又は翌年一月布哇(註:ハワイ)を攻略す
…略…
(ハ)第三段作戦第二期
●独乙と策応南北米州の遮断に努む 1F(註:空母機動艦隊)及9F(註:主力潜水艦艦隊)を米州に志願に機動せしむ
●状況により「パナマ」運河を破壊す
●1F及8F(筆者註 基地航空兵力基幹の艦隊)を以て北米西岸要地を空襲す
●要すれば南米要地に独乙と共同派兵し 之を枢軸陣営に投ぜしめ 米の必要とする資源の輸出を完全に遮断す
●状況に依り加州油断地帯を占領す
●基地航空部隊の加州進出 北米全域に亘り都市及び重要軍事施設を攻撃す

 防衛庁防衛研修所戦史室(編集)『〔戦史叢書〕大本営海軍部・聯合艦隊2』朝雲新聞社, 1975, pp. 305-307(原著にある注を必要に応じて編集)

軍の要職にある人物ですら、ライトノベルのような、誇大妄想的な楽観論を抱いていたわけで、おどろくほど状況認識が甘かったということになります。

上記のハワイ島攻略作戦やアメリカ本土攻略作戦は結局実行されませんでした。しかしガダルカナル島の戦いやインパール作戦など、無謀な作戦を立案して途方もない餓死者を出してしまった実例もあります。「情報」を正確に把握して計画を立てるということが、いかに戦争において重要であるか痛感せざるを得ません。(情報を正確に把握していればそもそも開戦など無かったでしょう。今日に至る日本と世界の歴史を見れば明らかなように、資源国であることは繁栄の必須条件ではありません)

【トンデモ】「もし日本が勝っていたら…」大東亜戦争下における夢想的戦後計画

2018.10.24

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