【日本国紀】原田実氏(と学会)・長谷川亮一氏(近現代史家)、トンデモ本ですらないコピペ寄せ集めと一喝

『サイゾー』2019年2月号

雑誌『サイゾー』(2019.2号)に「トンデモ本ですらないコピペ寄せ集めの偽書:ご都合主義の愛国心でツギハギ? 慰めとしての百田尚樹『日本国紀』」という特集記事がありました。

このなかでは長谷川亮一氏(近現代史家)と、原田実氏(と学会)が評を寄せていましたので、その要点を紹介したいと思います。もちろん、結論を先取りすれば、本記事タイトルにもあるように散々な評価なのですが(笑)

特に原田氏の「トンデモ本」の定義に関する評は「そういわれればそうかな?」と思う興味深いものです。

内容に関する評価

まず『日本国紀』の内容に関する評価は散々です。長谷川氏は次のように酷評。

「百田氏は『日本書紀』どころか、現行の教科書もちゃんと読んでないんじゃないかな。ロジックもところどろころで破綻していて意味不明な箇所もありますし、正確さという点ではナメ腐っているとしかいえない。2、3ページに1箇所は引っかかる記述があってなかなか読み進められないんですよ」

具体的なチグハグの例として、ある箇所では「万世一系スゴイ!」と天皇中心史観を唄っているのに、別の箇所では天皇中心の時代ではなかった江戸時代を再評価している点などを挙げています。

また原田氏は『日本国紀』が手慰みに過ぎないと酷評。

「……さすがにコミンテルン陰謀論やWGIPの粗雑さにはついていけません。それらは『なぜ日本が戦争をしたのか? その戦争になぜ負けたのか?』について、『敵が卑怯だったから』という、言い訳として機能しているんですよ。それが慰めになる人もいるでしょうが、戦争を起こしたことや負けたことへの反省にはつながらない。『日本国紀』もそのような慰めとして機能する本……」

これについては全く同感です。コミンテルン陰謀論やWGIPを真に受けると、戦前・戦中・戦後を通して「日本」という主体性が全くなくなってしまうという矛盾に陥ります。さすがにそんなことは有り得ないでしょう。

自分の信じたくない事実すべてを、コミンテルンやらWGIP(あるいは朝日新聞)やらに責任転嫁することは、自己の責任を放棄することですから、これほど受動的で楽な理論はありません。こういう考えこそ自虐思想であり、自慰史観でしょう。(参考記事

そしてこのような自慰史観の裏側には、西洋コンプレックスがあると長谷川氏は鋭く指摘。

「『日本国紀』は聞きかじった知識を並べ立てた愛国主義的な歴史エッセイですが、偽史の世界でも……ヨーロッパ思想などに対するコンプレックスがありました。その裏返しで『日本の偉大さを証明したい』と、思うようになったのは百田氏と共通しているでしょう」(長谷川氏)

これも図星だと思います。『日本国紀』には、「もし~していたら日本が世界制覇していた」系のコラムが挿入されていて、西洋よりスゴい日本という架空戦記のノリなんですよね。

こういう架空戦記は、大東亜戦争緒戦で勝ちまくっていた日本軍将校もしていたので笑えないコトなのですが。

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『日本国紀』はトンデモ本か?

ところで『日本国紀』をめぐっては「トンデモ」という形容詞がよく用いられます。この語を世間に広めた「と学会」の会員でもある原田氏は、『日本国紀』はトンデモ本ではないと次のように主張しています。

「……私はトンデモ本に対しては、発想の飛躍なり高揚なりを求めたいもので『日本国紀』のことをトンデモ本とは呼びたくないです。あの本の誤りは発想の過剰さではなく貧しさから来ている」
そもそも、トンデモ本とは「著者の意図とは異なる視点から楽しむことができる本」であるため、コピペだらけの『日本国紀』はこれにさえ該当しないということだ。

なるほど。

たしかに『日本国紀』は思想的には陳腐で何の面白みもありませんので、そういう意味では、狭義の「トンデモ本」ではないかもしれません。

しかしよく考えて頂きたい。

日本人の物語を2600年に渡って紡ぎ出した「通史」であるにもかかわらず、内容の真偽問題だけではなく、「コピペ箇所探索」という知的遊戯を提供してくれた『日本国紀』こそ「トンデモ本」に相応しいのではないでしょうか!?

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6 件のコメント

  • 「破『城』」は「破『綻』」(はたん)で「はじょう」と誤読して変換されたら出たとかでしょうか?誌面をご確認ください。

  • ろだんさんがご愛読の健康情報シリーズ(笑)と違って、日本国紀は単体でトンデモ本扱いするには弱いかも知れません。
    とは言え、「トンデモな制作過程」を辿る楽しみがあります…
    いつになったら完成するのでしょうか?(苦笑)。

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