何かがオカシイ見城徹氏の発言
ツイッター上では、日本国紀関係者が、売れている自慢を繰り返す一方で、押しつけ配本談合などの疑惑に過剰反応を示しています。無断転載の問題についても、常識を逸した発言が飛び出すようになっています。
今回取り上げたいのは、『日本国紀』が「本当にそこまで売れているのか?」という疑問です。書店員の方や、出版関係者の「それほど売れていない」とか「在庫過多の状況なのに送られてくる」などとった声も聞かれています(関連記事)。
一方、見城氏は、そんな声はデマで、『日本国紀』はバカ売れ状態だと豪語し続けています。そんななかで本記事が注目したいのは、昨年12/25の次の発言です。
[日本国紀]のネット実売はAmazonや楽天ブックス、その他で13万部近く行っている。リアル書店の実売は約32万部強。合わせて45万部と推測している。オリコン調べなどどの出版社でも参考にしていない。サンプル数が少ないからだ。今日5万部重版して発行部数は55万部。水増ししても意味がないよ(笑)。
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) December 25, 2018
しかしながらこの発言はどうもおかしい。
この見城氏の発言が真実ならば、店頭には第1刷~第5刷(45万部)がほとんど無くなっているはずです。しかし店頭でも今も古い刷が多く残っています。
一体これはどういうことなのでしょうか? 本記事ではこの問題を考究していきたいと思います。
オリコンチャートとの比較
この問題を考察するために、オリコンチャートでの実売数と、幻冬舎サイドが発表している公称刊行部数を表にします。
オリコン実売数(累計) | 公称刊行部数(累計) |
11/05-: 47,358 | 1st(11/10)250,000 |
11/12-: 130,710 (178,068) | 2nd(11/15)50,000(30万) |
11/19-: 39,808 (217,876) | 3rd(11/20)50,000(35万) |
11/26-: 28,415 (246,291) | 5th(11/28)50,000(45万) |
12/03-: 20,542 (266,833) | |
12/10-: 20,288 (287,121) | |
12/17-: 18,170 (305,291) | |
12/24-: 20,784 (326,075) 見城氏発言12/25: 45万部 | 6th(12/25)50,000(50万)帯変更→50万部! |
12/31-: 28,545 (354,620) | |
01/07-: 21,092 (375,712) | |
01/13– | 7th(1/15)50,000(55万) 8th(1/?)50,000(60万)帯変更→60万部 |
ここでも重要なるのは12/25の見城氏の発言です。この発言と、『日本国紀』の公称発行部数を真正であると信じるならば、次の仮説を導き出すことができます。
- 見城氏の12月25日発言が正しければ、12月25日の段階で第1刷~第5刷までの45万部がほぼ完売していなければならない。
- よって1/20現在の書店には、第1~第5刷はほぼ完売状態で、第6刷~第8刷が主流でなければならない。
実際の書店では第1刷~第5刷が売れ残っている
このように幻冬舎サイドの発言がすべて正しいとするならば、現在の書店には第6刷~第8刷がその殆どを占めていなければなりません。
しかし実際の書店に行けば異なる結論が得られます。皆さんも近くの本屋で調べてもらえば解りますが、第1~5刷が大量に店頭に残っています。これは帯から簡単に見分けることができます。
ツイッターに投稿された次の写真をご覧ください。
@hyakutanaoki
— 斎藤 純二 (@jyunji_saito) January 19, 2019
異常者がどんなに「コピペコピペ」と叫ぼうとも、売れに売れている日本国紀。
やはりよいものは売れますね。 pic.twitter.com/D1gNxl5NdI
帯に赤字で「50」と書いてあるのが第6~7刷、「60」と書いてあるのが第8刷、数字の書いていないものが第1~5刷(旧帯)です。
明らかに旧帯(第1~5刷)の方が多いことが解ります。
もちろん上に積まれたほうが古い刷である可能性も考えられますが、近くの書店で調べたところ、その様に積んでいる店舗はありませんでした。上に行けば行くほど新しいです。山積の下にわざわざ新しい刷を入れる大変さ、刷が異なっていても同じ本として数えられていることを考えればこれは当然でしょう。
つまり現時点で書店に第1~5刷(旧帯)が数多く残っていることは、幻冬舎サイドの発言が信用できないことを示唆しています。
また次の写真でも明らかに古い刷が売れ残っています。
エアーポートウォーク名古屋の紀伊国屋書店さん百田さんの本のコーナーありました❗
— acha583「いくつもの片隅に」待ちわび中 (@rokuyon1000) January 19, 2019
自分は日本国紀の副読本買いました。 pic.twitter.com/ZLMA4EanGh
次のような報告も頂きました。
【日本国紀関連 拡散希望】
— アンチ『百田国紀』 (@Pqe2p9Tsv5gWyq3) January 20, 2019
埼玉中部のTSUTAYA書店、『日本国紀』31冊確認。
[内訳]6~7刷5冊。1~5刷大半、その内第1刷がほとんど(15冊だけ確認できて1刷が11冊、3刷が1冊、5刷が2冊)。
平積みの表面6冊中第1刷が5冊、6or7刷が1冊
8刷はなし。
これはどう考えたらいい?
#百田尚樹
#有本香 pic.twitter.com/s91DQ5yTTS
まとめ
以上、次の点が結論付けられます。
- 幻冬舎サイドの発言を信ずるならば、現時点で書店には第1刷~第5刷までの旧帯本は殆ど完売していなければならない。
- しかし実際の書店の在庫を見ると、旧帯本(第1刷~第5刷)が未だ多数売れ残っている。
- したがって幻冬舎サイドの発言は不正確である可能性が極めて高い。
これが何を意味するのか、どのような裏があるのか私には解りません。
皆さん、どうぞお近くの書店の情報をお寄せください。
【追記】その後、ツイッターで多くのコメントを頂きましたが、やはり旧帯の『日本国紀』が売れ残りまくっているようです…どういうことなんでしょうか?
出版不況のこのご時世にあっては10万部超えればベストセラー扱いなのに。見城社長・百田氏らの手腕は見事であると言わざるを得ません!
オリコンの数値がどういう性質のものか詳しくは知らないのですが(真の売上個数よりも高く出るのか低く出るのかとか、どれくらいバラつくものなのとか)、普通の経営者なら何らかの方法で現実性のある推計を行い、それに基づいて供給量を決めていると思います。仮にオリコンの数字が現実だとして、本当に60万部出して今の時点で20万部も売れ残っているなら……考えただけで恐ろしい。
数あるデータから正確な本の売上や今後の売行を推し量る方法があるのに、それをやらずに大増刷に踏み切る。こんなことをするのは何らか売れる公算があるからで、さもなくば経営者としての無能ということになりますが、これまでの社長の実績に鑑みると、私は前者なんじゃないかと睨んでいます。
この記事では、
> これが何を意味するのか、どのような裏があるのか私には解りません。
と締めでいますが、商業の観点から日本国紀を評するには、まだ時間が必要なのかもしれません。
内容がアレであることが明らかになってきているものの、出版業界においては文章の中身よりも装丁の美しさ、作者のネームバリュー、広告の手法といったものが経済的意味での成否を決定付けるので。
ということで、私はあと1年くらいは幻冬舎の販売手法を注視していきたいと思います。(粘着宣言? 笑)
ところで最寄り書店での当書籍の扱いですが、入口の一番目立つところに30冊程平積みされ(発売してから現在までこの扱いで、最近は副読本も加わりました。)、ぱっと見で(背中や天地の日焼け具合、埃の付き具合からの推定で)、およそ半分が旧版本という感じです。
旧版本が根雪のように残っています。新版が来てもわざわざ組み直しておらず、後入先出になるような陳列をしているようで、春が過ぎても溶けないんじゃないかと心配しています。
情報ありがとうございます。
やはり幻冬舎サイドの情報は少々信憑性に欠けますね…。助かりました!
2019年1月20日 7:05 AMの匿名です。
続報ですが、地元の別の本屋さん(市内で2番目か3番目に大きいところ)に立ち寄って見てみたところ、3,40冊あった中でおよそ半分が旧版本でしたね。
一番目につくところにあったのは帯に50万部、60万部云々と書いてあるもの(新版本)でしたが、棚や山の下の方にあったのは旧版本。
以上は地方都市からのレポートですが、都心部とか町村エリアがどんな感じになっているのか気になるところです。
偽史も鳴かずば撃たれまい
@かんしょうしゃさんへ
座布団一枚!
私も僭越ながら、返歌ではありませんが赤い人(ろだんさんに非ず)に因んで『君の積まれの不幸を呪うがいい(親御さん方にはばっちり聞こえているかも)』。
保守は嘘ばかりだな。
書店って先入れ先出しってしないの??
(´・ω・`)まぁ陳列を客が崩したり勝手に整えたりしてる可能性はあるけど。素朴な疑問。
とびうお様
2019年1月20日 7:05 AMの匿名です。
最寄り書店の日本国紀は、入口付近に本を立てて立体的な展示をしており、新しい版のものが目につくようになっていましたね。古い版のものが、その土台になっている感じでした。写真撮ってないし(本矢で写真構えるのは抵抗がありまして…)、アップもできないので言葉でしかお伝えできませんが(^^;
50万部とか60万部とか、帯に新しい情報が載るのでこうした陳列の仕方をしているのかもしれません。あるいは、日本国紀の版の古いのは内容が間違っているから、そういう「ハズレ」を消費者がなるべく手に取らないような配慮か?(笑)
なお、この最寄り書店のほとんどの平積み本は、版が古いのとか小口が変色して削ったようなのを一番上に置いています。書店の一般的な展示の仕方は知りませんが、先入先出が通常ルールっぽいですね。
紀伊国屋の仕入れが約3万、売上が約2万なので、紀伊国屋のシェア率(5%)や消化率から考えると、現在の総売上は40万部程度ではないかと推察されます。
ブックファースト新宿店の日本国紀の一番上は第3刷でした。
ブックファースト新宿店の日本国紀の一番上は第3刷でした。
先週水曜日、地元ショッピングセンター内の平和堂書店(売り場面積は平均的ツタヤ位?)に行った際、発売以来、店頭に平積みされている「日本国紀」を調べてみたところ、悉く初版でした。滋賀県では実売は大したことないのかも…
素朴な疑問ですが、日本国紀を今amazonで発注すると第何版が届くんでしょうかね。最新版以外だったら「商品に欠陥がある」として無償で返品ないし最新版への交換に応じてもらえるのかな。
出版社が作者に払う印税って基本的には本が実際に売れた数じゃなくて本の発行数を基準に払われますよね?
幻冬舎が売れていない本の増刷を繰り返す理由が謎