【トンデモ】朝鮮戦争から学ぶ、日本は自衛戦争だった論(安住順一「朝鮮戦争」『社会科教育』53(9), 2003)

はじめに

小中学校教育の雑誌『現代教育科学』に「日本は、大東亜戦争で人類最高のよいことをしたのだ」(詳細)という教育論文を発表した安住順一先生が、雑誌『社会科教育』2003年9月号に「朝鮮戦争」を題材とした教育方法を掲載していましたので紹介します。

朝鮮戦争をはじめたのはどちらか

まず安住氏は、現在流通している歴史教科書や研究書の記述を取り上げながら、朝鮮戦争の開戦経緯について、①韓国側から仕掛けた、②朝鮮側から仕掛けた、③どちらが仕掛けたのか書いていない、という三種類の記述がみられる点を指摘します。さらにこれに加え、教科書間の「侵攻」「南下」といった微妙な記述の食い違いに着目しながら、「執筆者の意図が伺える」や「日本の歴史学界の異常さが分か」るなどと主張します。

ある意味、歴史は相対的なもので、いわばナラティブ(物語)ですから、歴史書や教科書の間に相違があり、執筆者の意図が背後にあることは否定しえない事実です(異常さまでは言い過ぎだと思いますが…)。むしろこのような相違は言論の自由が守られていることの証明でもあるように思えます。

大東亜戦争は自衛戦争だった論

ここまでで終わればいいのです、安住氏はなぜかこの議論を、アジア太平洋戦争(大東亜戦争)の「日本は自衛戦争だった」説に結びつけます。いつものお約束のごとく、次のマッカーサーの発言が引用されます。

したがって彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障(筆者註:security)の必要に迫られてのことだったのです。

つまり、「教科書間で相違がある→教科書が正しいとは限らない→大東亜戦争は侵略戦争ではなく自衛戦争だった」と結びつけることが本論文の真の目的であり、「執筆者の意図が伺える」格好の事例を、安住氏が自ら提示しているといえます。

最後に次の言葉をもって締めくくられます。

東京裁判史観の間違いを認識させることは重要である。その一つの切り口として朝鮮戦争は良い素材になる。

安住先生にとって重要なことは、「日本は、大東亜戦争で人類最高のよいことをしたのだ」という言葉に象徴される歴史観を伝えることで、朝鮮戦争はそのダシに過ぎないことがよくわかります。この歴史観については安住先生による以下の論考をご参照ください。

【トンデモ】「日本は、大東亜戦争で人類最高のよいことをしたのだ」(安住順一『現代教育科学』49(8), 2006, pp. 49-52)

2018.10.15

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