【トンデモ】『日本国紀』が大東亜戦争の侵略性を認めてしまう。

通史の歴史戦

さてさて、保守による通史歴史戦の決戦兵器ともいうべき百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)が刊行されました。筆者も早速買って読んでみたわけですが、その冒頭部分が記紀神話から始まっていないなど、保守にしてはマトモでびっくりしてしまう要素が多々あることは認めざるを得ません。なにより、言葉足らずなのか、暗に南京大虐殺を認めてしまうなど、なかなか香ばしさのある名著であると思います。

続いて今回は、「大東亜戦争は侵略戦争ではなかった」論を主張する百田尚樹氏の素晴らしい修辞学を見てみたいと思います。

【トンデモ】南京大虐殺は無かった?(百田尚樹『日本国紀』幻冬舎, 2018)

2018.11.09

大東亜戦争は侵略戦争ではなかった論の不思議

百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)の第11章「大東亜戦争」には次のようなコラムがあります。

コラム「大東亜戦争は東南アジア諸国への侵略戦争だった」と言う人がいるが、これは誤りである。
日本はアジアの人々と戦争はしていない。日本が戦った相手は、フィリピンを植民地としていたアメリカであり、ベトナムとラオスを植民地としていたフランスであり、インドネシアを植民地としていたオランダであり、マレーシアとシンガポールとビルマを植民地としていたイギリスである。日本はこれらの植民地を支配していた四ヵ国と戦いって、彼らを駆逐したのである。

 百田尚樹『日本国紀』幻冬舎, 2018 , pp. 391-392

ここで「あれ?」と気がつくはずです。そうです、中国が抜けているのです。というのも大東亜戦争は「中国」での戦闘も含みます。もちろん中国戦線では植民地支配者ではなく中華民族と戦闘しました。

ですから大東亜戦争は、確かに百田先生の仰るように「「大東亜戦争は東南アジア諸国への侵略戦争だった」と言う人がいるが、これは誤りである」という解釈も可能かもしれませんが、少なくとも理論は中国に対しては使えません。つまり百田先生は「大東亜戦争そのものが侵略的ではなかった」とは断言しておらず、暗に中国への侵略性を認めている記述になっています。

この後に続くコラム本文でも「欧米諸国をアジアから排斥し、中華民国、満州、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ビルマ、インドを含む広域の……共存共栄を図る政策だった」ですとか、アジア諸国の国名を挙げて独立させてやったとか書いてありますが、そのなかに中国共産党(中華人民共和国)系列の名前は一度も出てきません

意図的なのか、偶然なのか解りませんが、大東亜戦争における中国戦闘の侵略についてのみ明言していません。つまり百田先生は、大東亜戦争は侵略的目的の有る戦争であったことを暗に認めていたことになります。極めてレトリカルな文章であると評価せざるを得ません。

追記:百田先生からTwitterブロックされてしまいました。大ファンなのにショックです…(涙)

【トンデモ】『日本国紀』が軍による強制売春を認めてしまう。

2018.11.09

【トンデモ】南京大虐殺は無かった?(百田尚樹『日本国紀』幻冬舎, 2018)

2018.11.09

8 件のコメント

  • 中華人民共和国の建国年。大体中学の社会科で習うと思うんですけど。1949年10月ですよね。
    日本の終戦っていつだかご存じですよね?1945年です。
    どうやって中華人民共和国と日本が戦争出来たのか教えて頂ければ幸いです。

    • 大東亜戦争によって解放されたことで「中華人民共和国」が独立したと、百田氏は述べていないということです。またその前身となる「中国共産党」界隈とは1945年8月前に戦争状態にありました。

  • まあ南京大虐殺にしたって犠牲者の大半は国民党で、中国共産党は大して被害を受けてないわけだし、百田センセイも多少は言い訳の余地があるんじゃないの(笑)

  • 違うよ 大東亜戦争全体の侵略性を否定するなら中国も混ぜろってブログの人は言ってんの 百田氏は東南アジアに限定して侵略ではなかったと言っているから それは暗に中国との戦争はそれらの正義の戦争には入らないと言ってるようなものだという指摘だよ

    百田氏の頭の中では日中戦争は大東亜戦争とは別なのかもしれない 俺は詳しくないから定義は知らん

    そういうわけで上のコメ書いたやつは人様に歴史の勉強しろと偉そうな口叩く前にまず自分が国語の勉強をしろ 読解力がないと勉強だけじゃなくあらゆる方面に支障をきたすぞ

    • 代弁ありがとうございます。中国をまぜると色々説明が面倒なので、百田氏はいっそ省いたのでしょう。

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