【トンデモ】米と魚さえ喰わせればイジメ・非行・暴力が無くなる(『奇跡の食育:給食を変えたらイジメ・非行・暴力が無くなった』美健ガイド社, 2014)

食育というトンデモ

「食育」が重要という言葉はよく聞きます。もちろん、常識の範囲ならば、栄養バランスに配慮したより安全で美味しい食材を選ぶというのは当然ことです。

しかしこのような健康志向が行き過ぎてしまうと、よく解らない謎商品が誕生してしまいます。たとえば水素水スーパーライトウォーターといった、科学的にはただの「水」が、癌などの重病に効くかのような触れ込みで超高額売買されていたりします。少し前にはマイナスイオンというのも大流行しました。

また食育が身体的な健康のみならず、精神にまで影響を及ぼすと主張される場合もあります。しかも「心身ともに健康」という常識的範囲を超えて、性格まで改善する劇的な効果が喧騒されます。今回は、そんな一例としてある校長先生の奮闘を記録した『奇跡の食育:給食を変えたらイジメ・非行・暴力が無くなった』(美健ガイド社, 2014)を紹介したいと思います。

暴力と犯罪の嵐!

物語は大塚貢先生が、校長として、とある荒み切った中学校に赴任する所からはじまります。しかしその荒れ方が尋常ではない。いきなりこれです。

校舎内を爆走するバイク…。そしてタバコの吸い殻が「バケツ一杯分」ってどんだけ吸荒れているんでしょうか。

そして、「毎日 何かしらの非行や犯罪が起きていました」とありますが、この非行や犯罪というのも万引き程度のものではありません。なんと、恐喝押し入り強盗窃盗すら起きているというから衝撃です。

こんなのが毎日起きてるなんて、少し古い不良漫画を読んでいるようです(唖然)。しかも、空き巣の目つきが明らかにおかしいです。確実にクスリとかやってるヤバい奴です。昔の学校は荒れていたとか聞きますが、マジでこんな学校あったのでしょうか!?

真面目な先生、学校が荒れている原因に気がつく

さて、この大塚貢先生は大変真面目な方らしく、この荒れた学校を立て直すために、生徒が興味を持つような授業を組んだりいろいろ試行錯誤します。そしてやがて、生徒たちが荒れてしまった理由に気がつきます。ある生徒が警察に補導され、交番で母親と喧嘩しているのを見て、「昔は違った…」と次のように結論付けます。

昔=手作り弁当
今=コンビニ弁当

という結論です。つまり「昔は手作り弁当だったので親子の絆があった。親子の絆があれば子供は素直になって更生するに違いない」という安直な理論ですが、一応、常識的です。

しかしそこはやり手の大塚貢先生だけあります。なんと家庭で手作り料理が無理だと解るや、学校の給食を改善して子供たちを更生させようという超理論を展開します。

「あれ? 親子の絆の話はどこにいったの?」とかツッコんではいけません、つまり、学校給食さえ改善させれば、親子の絆少年の更生も両方ともうまくいくのです!(無茶な)

恐るべき劇的効果

その後、大塚貢先生は保護者から苦情を受けながらも、周りの協力を得て給食を改善していきます。この改善内容とは、給食を魚と米をベースにするというだけのモノなのですが、その効果がスゴすぎる。

なんと図書室のイス120席が全部埋まると、生徒たちは廊下に出てまで本を読み出したそうです。給食を食べたら本を読まずにはいられなくなるなんて、あり得るのか…。(;゚Д゚)

更に功能はこれだけに留まらず、年間400冊あった図書の紛失がゼロか一冊になったり、「小中学校コンクール」に毎年入選するようになったり、40~50人いた不良が二人に減ったり、生徒たちが自分から勉強するようになった、そうです。

正直、「どんな危ない薬を給食に混ぜたんですか?」「そこは何かの宗教施設ですか?」と疑いたくなるレベルの功能です。

第二の赴任校でもスゴイ

このように、荒れた中学を見事立て直した大塚貢先生は、第二の赴任校に向かいます。しかしここもやはりスゴイ。

……。この先生は長野でお仕事されているそうなのですが、長野では局地的に不良や暴走族が流行っているのでしょうか。湘南海岸出身の私ですらこんなコテコテの不良や暴走族に遭ったことがありません(偏見)。

やっぱり給食改善

さてさて大塚先生は、こちらの中学でも生徒更生のために、給食改善をめざします。しかも親子の絆の話はもう出てきません。給食さえ改善すれば万事解決すると気づかれたようです。

そして給食でのパンを「パンと魚じゃ こりゃ最悪だ~」「物凄い量の防腐剤が入っている」「軟化剤も入っている」などとディスりまくりながら、日本食・無添加の重要さの伏線をはりつつ、次のように宣言します。

眼が燃えて光っています。もう誰にも止められません。「欧米食文化の代表みたいなパンは止めだ!」などと微妙な愛国セリフが入っていますが、この大塚貢先生は、『明日への選択』や『正論』に寄稿してしまう保守主義者という一面があります。

米の選び方

こんな熱血保守先生ならば、米の選び方にも一つの哲学があります。パッケージに「コシヒカリ」と書いてあっても、偽装の可能性を考慮するほど用心深いのです。給食に相応しい「真の米」を見つけるために、先生は複数のお米を買い込んで来て、それらを小皿に入れて並べ観察します。しかしその鑑定方法とは…

なんと虫の湧いた米は防腐剤や農薬が入っていないから安全という理論です。

……。

なんとツッコミを入れるべきか。(;゚Д゚)

お米というのは管理方法で虫の沸く沸かないが大きく左右されることをご存じないのでしょうか。むしろ虫が沸かないお米は管理がしっかりしていたとも理解できるはずなのですが、その様な思考にはならないようです。

もちろんここまで選んだからには給食の功能もバッチリ、なんと判断能力が身に付き非行がゼロ、学習意欲も高まったとのことです。ヤッタネ!

疑似科学とトンデモ

以上、漫画の内容をざっくり紹介しました。この他にも米食・魚食の重要性、無農薬・無添加の重要性などが色々と描いてあります。私は科学者ではなく、それらを否定するデータを持ち合わせているわけではありません。

しかし漫画をまとめるならば「トンデモ食育論」としか言いようがありません。不良が更生した理由が、この漫画では「給食改善」の一点に集約されていますが、食事を変えたくらいでここまで劇的に変化するならば、既に各国が我先に取り入れているはずです。したがって、この漫画の食育論は疑似科学であり、超高額水素水といったヤバイ世界と隣り合わせだと思います。

コメントを残す