【トンデモ】お米は大和民族の気質と優秀な頭脳を育んできた(白鳥早奈英|『月刊カレント』51(11), 2014.11)

日本米は世界一!

日本は「瑞穂の国」と称されるなど、稲作は神話の時代にまで遡ることが可能です。そのためか日本人の中には、「お米」に対し並々ならぬ愛情を感じている方々もいます。

たとえば戦時下の1942年に出版された橋本為次『日本のお米』(学友館)には、日本の稲作の歴史や、世界各地のお米の種類を紹介しながら、「日本のお米は世界一」と次のように宣言しています(クリックで拡大)。

橋本為次『日本のお米』学友館, 1942, pp. 40-43

うーーん。「日本のお米は世界一」という根拠が、味が旨いとか、み入りがつまっているとか、粒が細くないとか、すさまじく主観に基づいた「世界一」認定であることは言を俟たないでしょう。

もちろん、こんな非科学的な国産米翼賛は、戦中という時代背景のなせる業であったことも十分に考慮しなければなりません。しかしこのような非科学的なお米信仰は、現代にもあるのです。

お米と国民性

神嘗祭などの神道祭祀が稲作と深く結びついてるように、我が国において稲作は神話の時代から続いていると信じられています。故にこの稲作は、時として、日本人の「国民性」にまで昇華させられます。

これは時代錯誤なアナログ発言なのではなく、今でも声高に叫ばれています。白鳥早奈英「日本人の気質と優秀な頭脳を育んできたお米」(『月刊カレント』51(11), 2014.11)では、日本人にとってお米とは単なる栄養補給元ではなく、日本人の気質を育んだ要因ですらあると主張されています。

この稲作は、実は現在の日本人の気質形成に深く係ってきたともいえるのではないでしょうか。つまり、今日有る日本人の性格は米作りと共になされて来たということです。
例えば次のようなことが揚げられます。
・心棒強い働き者であること
「米作りには八十八の手間がかかる」という言葉もありますが、稲作りには草取りをはじめ、たくさんの手間がかかります。その一つでも手抜きをしたなら、お米はできません。辛い仕事を耐え忍んで心棒強く働くことで、おいしいお米が収穫できるのです。
・仲間と協力し合う
お米を作るために欠かせないのが水ですが、その水を川から田んぼまで引くためには水路を作らなければなりません。水路は大勢の人の協力は必要です。その為にはみんなで仲良く力を合わせるという性格が育ちました。
・自然を大切にする心の芽生え
農家の方は、いつも天候や自然のことを注意深く観察し、細やかなことに気付き、自然と一体になって米作りを行ってきました。その結果、自然を大切にする心が生まれ、自然に順応する鋭い感性が磨かれたのです。

日本人の人格形成がなされ、健康面を支えて来たお米。そしてなによりお米はおいしい食べ物であることもお米を主食と出来る日本人は、神に祝福された素晴らしい国民です。大いに誇りをもって生きてまいりましょう。

……ツッコミどころ満載過ぎてどうしようもない文章です。

「お米作りは手間がかかるから日本人が辛抱強くなった」「水路を作らなければならないから仲良く力を合わせる性格が育った」「天候や自然を注意深く観察するから自然に順応する感性が磨かれた」って、麦つくりだって野菜つくりだって手間はかかるし、仲間の協力は必要だし、自然と一体となって作るのは同じでしょう。

いったいこの人の論理性はどうなっているのでしょうか!?

まして、稲作は世界各地で古くから続けてこられたものですから、どうして稲作が「日本人性」だけを育むのか意味不明です。

無理して愛国を唱えようとしだすと、お米に限らず何でもかんでも日本の伝統が日本人性を育んでおり、その日本人性は素晴らしいものだとなりがちです。本稿はその典型的な構造を示す良い事例でしょう。



1 個のコメント

  • 協力して仲良く?むしろ稲作をやるようになってから争いが起きるようになったんじゃありませんでした…?私の覚え間違いでしょうか…

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